パンデミック発生以降、アメリカでは家賃の踏み倒しが合法的に認められてきました。
これはモラトリアムと呼ばれていますが、この法律の期限が今月末で切れます。
過去にも、家賃の踏み倒しが合法化されてきたことについて、何度か書きました。
そしてこのタイミングで、アメリカの連邦上訴裁判所で、CDC(アメリカ疾病予防センター)がコロナウイルスの蔓延を抑えるためとして決めた強制退去のモラトリアムが違法であるという判決も出ました。
U.S. appeals court finds CDC eviction moratorium unlawful
まともに考えれば、他人の持ち物に対して政府機関があれこれ指図することが合法だとは思えません。
モラトリアムの期限切れで、どれくらいの影響が出るのかについての記事があります。
A the end to the eviction moratorium looms, tenants fear help will be too late
この記事によれば、国税調査の数字ですが、3月の時点で家賃を滞納している個数は640万件。
一戸当たりの平均人数は2.6人なので、影響を受けるのは1664万人前後ということになります。
分かりにくいと思いますので、比較すると現在の東京都の人口は1396万人です。
ですからそれ以上の数の人が家から追い出されることになります。
そしてこの数字のうち360万人が数か月以内に、強制退去になると述べられています。これだけの数なので、退去には時間がかかるのだと思います。
いずれにしても、これまでのアメリカ不動産史上では、類のないほどの大量強制退去が行われることになります。
少し前までは、この法律はまた延長されるのだろうと思っていましたが、どうやらバイデン政権はそのつもりはなさそうです。
どうやらかなりのバブルを経験してきたアメリカ不動産は、これで下落に転じることが決定的となったのかもしれません。
アメリカの大家の場合、強制退去が終わったら一安心ということにはならない場合があります。
追い出された人たちはどこかに行くわけです。
家族の家に引っ越したり、友人と同居したりできる人はまだ良いのですが、それができない人はホームレスになります。
大家にとっての問題は、空き家に勝手に引っ越す人がいるというリスクです。
英語でスクワッターと呼ばれる人たちですが、これは大家にとっての頭痛のタネになります。
この場合、大家は再度、強制退去のプロセスを繰り返すことになります。そして退去させるまでの間、裁判所の命令で物件の修理を命じられたりするのです。
日本人にとっては理不尽だと思われますが、アメリカの法律では家賃を払わない人にも一定の住環境で生活する権利が認められています。
この状況を賢く回避できるかは投資家次第の場合が多いです。
これは少しだけ関連のある記事ですが、ある人は不動産のエージェントに家を貸しました。
しかし、このエージェントはメモランダムを悪用し、家賃を支払わずに居座り続け、大家に経済的な損失を与えました。
アメリカの不動産投資では、こういう人が時々いるので、不動産のプロとか弁護士に貸すのは意外とハイリスクだったりします。
大家は賢くないと、食い物にされるという例の典型ですね。
これから数年間は、かなりの混乱が見込まれますが、参入の最高のタイミングももうすぐそこまでやってきています。