アメリカの不動産の世界では、「不法占拠者の権利」が法律で認められています。
英語ではスクワッター(Squatter)と呼ばれていますが、勝手に他人の家に侵入し住み着いてしまう人の事です。
勝手に他人の家に侵入した上に、権利を主張するなどどは言語同断ですが、現実問題です。
最近、アメリカで「不法占拠者の権利」を拡大し悪用する動きが広がっています。
特に大量にアメリカに侵入している不法移民が勝手に侵入するケースが相次いでいます。
先日、不法占拠者を退去させようとして逮捕されましたが、その理由は退去させるために鍵を変えたことが原因でした。
不法占拠者は現場に来た警察官に、偽物の賃貸契約書を提示したようです。
そうなると警察官としては事情が分からず、結局は鍵を変えたオーナーを逮捕したとのことです。
最近起きた別の事件ですが、ベバリーヒルズの高級物件に侵入した例が報道されていました。
売り物件情報から空室であることを知った不法侵入者たちは、勝手に侵入した挙句、近所の人たちには物件の新しいオーナーであると吹聴していたようです。
毎晩のようにパーティーを開催し、招待状を送付していました。
二階のテーブル席は$1500で一階のテーブル席は$500でした。女性同伴の場合は入場は無料という内容だったようです。
彼らにとっては不法に占拠することはビジネス化としてたと言うことです。
結局、この不法入居者を排除するのに5か月かかったようです。
あと親切心からタダで住ませてあげたにもかかわらず、反対に訴えられるという事件も発生しています。
アメリカでは日本に比べて不法入居者の権利が認められる傾向が強いのですが、州によって法律は異なります。
不法占拠が長期間に及ぶ場合は、物件の所有権すらも不法占拠者に移ってしまうことがあるので、注意が必要です。
不法占拠事件は刑事では民事として扱われるため、物件所有者は法的な手段を講じて排除する必要があります。
しかし裁判所の待ち時間が数か月かかることも珍しくなく、判決まで半年から1年かかるケースも珍しくありません。
不法占拠は不動産投資家にとって、非常に重荷となります。
弁護士費用がかかりますし、収入がないのに保険や固定資産税の持ち出しがあるだけでなく、裁判中に物件の修繕を命じられる場合もあります。
そして不法占拠者が使う水道料金が固定資産税に加算されることも多く、物件オーナーの持ち出しとなります。
時折入居者がいる物件が売りに出でいますが、追い出したくても追い出せずに売りに出すオーナーの場合があることも知っておくべきです。
不動産投資家として一番懸念するのは空室状態の時に、どのように物件を守るのかという点です。
空室時に勝手に侵入されると大変なことになります。
まずすべきことは物理的に侵入されない環境を作ることが大切です。
アメリカでは窓やドアをコンパネで覆ってある家を見かけることがありますが、これは不法侵入者対策としてなされているものです。
多少の費用は掛かりますが、後のことを考えるとやっておくべきだと思います。
英語ではボードアップと言います。
あともっと余裕のある人は、専門のセキュリティードアを設置することも可能です。
このドアがあれば侵入した後に住むことは困難ですので、非常に効果的です。
時折、売り物件にセキュリティドアが設置されている場合があります。
私は過去に何度かドアも物件とセットで入手したことがあり、その後もしばらく使いまわしていました。
物件のオーナーとしては法的な対策を講じることも必要です。
まずは空室物件には監視カメラを設置することです。
不法占拠者の権利は認められているとはいえ、不法侵入は全米で違法です。
カメラを設置しておくことで犯罪の証拠を入手でき、入居者が不法に侵入することで犯罪を犯したことを証明できます。
これは民事では刑事事件として扱われるケースが大半です。
家賃を支払うはずの入居者が不法占拠者に変わるケースも想定しなければなりません。
その場合、賃貸契約書の有無とその中身が命運を分けることになります。
賃貸契約書が無かったり、不法占拠者が偽造契約書を提示したために退去させられなくなる事態も想定されます。
ここで役立つのは賃貸契約書を作成する時に、公証(ノータリー)をしておくことです。
日本とは異なり、アメリカでは普通の人でも公証人の資格を持っている人は多くいますので、賃貸契約締結の際に公証してもらうことで、後から偽の賃貸契約書を提示されるリスクを回避することができます。
資格を持つ第三者により公証された契約書の存在は、非常に有効です。
そして契約書の偽造も刑事犯罪として扱われることも知っておくべきです。
リスク回避のノウハウだけでなく、強制退去排除のノウハウを知ることが投資家には必要です。
この問題だけでもアメリカでは家を失う人が大量に発生する予感がします。