日本でも田舎に行くとゼロ円住宅なるものがありますが、アメリカでも同じ現象が起こりつつあります。それは商業不動産です。
ここ最近、世界的に商業不動産があちこちでトラブっていることが報じられています。
ブラックロックやブラックストーンといったヘッジファンドのREITで資金の引き出し停止が相次いだり、デフォルトしています。
アメリカでは中小金融機関のバランスシートの大半は商業不動産であるため、非常な危機に晒されています。
この背景には金利の上昇と商業不動産の空室率の高さが原因です。
今後2年間の間にリファイナンスが必要になる融資の額は150億ドルにも上ります。
これらの融資は3%程度で借り入れをしていると思われますが、借り換え後には最低でも8%以上なると考えられています。
これは借り換えができた場合の話で、現状で貸し出しをする金融機関はどこにもありません。
お先真っ暗な商業不動産市場なわけですが、著名不動産投資家のカイル バスが"解決策"として「商業不動産を取り壊す」ことを提案しました。
記事の中で彼はこう述べています。
都市部のオフィスビルは需要が戻っておらず、その多くを住居用不動産に変えるのは非現実であるため、取り壊す必要があると同氏は指摘。
「やり直さなければならない資産クラスの一つであり、やり直しとは解体を意味する」と語った。
要するにアメリカのオフィスビルの価値はなく、同時に金融機関の巨額の損失は不可避であると言っているようにも聞こえます。
ちなみにアメリカの商業不動産の資産規模は30兆ドル(400兆円)と言われています。
サブプライム危機を予見したバス氏、オフィス不動産に警鐘-解体せよ
平均でアメリカの商業不動産の空室率は20%程度のようですが、さらなる景気後退により空室率はさらに上昇すると思われます。
数日前にはサンフランシスコの商業不動産の空室率が30%を突破したことが報じられていました。
別の報道では、税米の大都市のオフィスは半分以上空いているのではないかとも報じています。
通常であれば、商業不動産を改装してアパートやコンドミニアムとして運用するのが普通です。
そのための費用をつぎ込む価値さえなくなるというのがカイルバスの見立てのようです。
しかし想像できると思いますが、ビルの改装には巨額の費用が掛かります。
水道も電気もすべてやり直し、その他にもコンクリート打ちをしたりと多額が費用が掛かるわけですが、その価値はないというわけです。
これに加えREITの価格は50%以上も下落しており、これからも利上げや相次ぐデフォルトにより下落が続く予定です。
この方が言いたいのはこういうことです。
収益は下がる一方で連動して不動産価値も下がる一方しかし借り換えもできず、かといって転用も難しい。
そしてできることであれば、いったん壊して更地にしてしまった方が良いのではということです。
しかし彼がここで述べていないことは、取り壊しにも巨額の費用が掛かるということです。
例えば、土地の価値は50万ドルなのに取り壊しに150万ドルかかるといったケースです。
こうなると不動産の価値は事実上、ゼロということになります。
こういうケースの不動産取り引きはやったことがある人ならば分かりますが、非常に興味深いものです。
お先真っ暗のように思えるアメリカの商業不動産ですが、私が知る限りここには非常なチャンスが埋もれています。
しかしそれは完全破壊が起こるという条件が必須であり、恐らくですがカイル バス氏もそのことを熟知しているものと思われます。
ややハードルが高い投資に思われますが、やる気がある人ならば試してみる価値はあると思います。
この見通しは通貨の崩壊という前提が含まれていないようですし、崩壊によるデリバティブの影響も当たられていません。
しかし今後数年間の間、金のコイン数枚でビルが一棟手に入る様な時代になるのかもしれません。