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セントラルバンカーが金を買う本当の理由とは?

世界中の中央銀行が金を大量に購入していることは、時折報じられています。

 

しかしなぜ購入しているのかについての明確な説明というのはありません。

過去を振り返ると、1990-2000年にかけては中央銀行は金を処分する傾向が強かったものの、2008年以降は一転して金を購入するようになっています。

金はドルや米国債とは異なり、経済危機の最中でも価値を毀損しないことは知られていますが、購入する理由はそれだけではありません。

というのは中央銀行はパンデミック前の比較的安定している時期でも、金を買い続けてきたからです。

それは西側諸国の経済から離れ、脱米ドル化を図る新興国間の経済に対応するためというのも理由ですが、もちろんそれだけではありません。

 

最近注目されているのは、金を大量に購入している中央銀行が巨額の含み損を出しているということです。

例えば、FRBも巨額の含み損を出していることが報じられていますが、損失の埋め合わせとして金を利用するのではないかという推測が浮上しています。

FRBのバランスシート上では、金は1オンス=$42として計算されていますが、実売価格の$2000に改定すれば帳簿上の損失を相殺することが可能です。

FRBは巨額の含み損を抱えている反面、巨額の含み益も抱えているわけです。

アメリカの場合は可能かもしれませんが、EUの場合は少し事情が異なります。

EUの法律により、金の利益あるいは損失は他の債権などと相殺することが禁じられているためです。

つまり金の含み益は金取引の含み損の相殺にのみ使えるということになります。

 

昨年、オランダ中銀総裁クラスノットはインタビューに答えた際、興味深いことが判明しました。

バランスシートがマイナスに転じようとしている点を指摘され、どのように対応するつもりなのかと聞かれました。

総裁は「オランダ中央銀行のバランスシートは健全だ。その理由は我々は2000億ユーロ以上の金を保有しているが、エクイティとして計上されていないからだ」と発言しました。

さらに金を売却することは考えているのか、と聞かれましたが、「絶対に売ることはしない」と答えました。

つまり今は法律で禁じられているが、緊急の際には金を使って損失を相殺するつもりであることを暗示しました。

 

2021年にある金アナリストは、ドイツブンデスバンクに金の価格改定を可能性を質問したことがありました。

その時の回答は、「現時点では将来のいかなる可能性については回答できない。一般的にはECBの規定に沿って決定することになる」というものでした。

しかしこのアナリストは「現時点では」また「一般的には」という表現からして、ブンデスバンクはあらゆる可能性を排除をしていない、と述べています。

この方は元中央銀行委員に同じ質問をしましたが、「これについて話すことは法律で禁止されている」というのが公式回答でした。

明言はしなかったものの、話の内容からEU加盟国のGDPに比例する量の金を各国が保有することはありうると考えているようだと、アナリストは語っています。

 

アメリカの話に戻りますが、金融機関の含み損が拡大の一歩を辿っているわけですが、破綻する時に彼らが頼る先と言えばFRBしかありません。

FRBは最後の砦ともいうべき存在ですが、肝心のFRBも先月の時点で1000億ドルの損失を出しています。

FRBは8133トンの金を保有していることになっており、現在の市場では4740億ドルの価値があります。

金融危機が抑えきれなくなる時に、起死回生の策として金価格の改定を踏み切る可能性はあるのでしょうか?

 

現時点ではただの可能性の一つですが、近年フランスやドイツは海外に保管していた金現物を自国に輸送しています。

経済危機が深刻化し、中央銀行が法律を変更して金価格の改定に踏み切れば、新たな金本位制が始まることになります。

ここ数年、トルコ政府はハイパーインフレに苦しむ通貨を救済するための協力を国民に依頼していて、国民が保有している金を政府が買い取るという提案をしています。

もう少しすると、ヨーロッパだけではなく世界中で同じことが起こり始めるのかもしれません。

世界中の中央銀行が軒並み巨額の含み損を出していることと、金の爆買いをしていることは決して偶然などではないと思います。

損失が増えれば増えるほど、金の価値は上がるということになるはずです。

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