今はどこの中央銀行もインフレとの闘いをしています。
インフレばかりに注目が集まりますが、中央銀行の本音としてはデフレはインフレよりも困るというものがあります。
ただ中央銀行が"インフレとの戦い"に完全勝利するということは、デフレになることを意味し、究極的には中央銀行が姿を消すことにつながります。
ハイパーインフレになっても終わりだし、ハイパーデフレになっても終わりという状況で自らの延命をかけた戦いを繰り広げているわけです。
どういうことかを説明するのに、米ドルを例にしたいと思います。
一般にドルはただの紙切れで裏付けは何もないと言われますが、正確にはFRBが保有する債務という裏付けがあります。
細かく見ていくと様々なものがFRBのバランスシートに資産として計上されていますが、ざっくりというとほほ全てが米ドル建ての負債といってよいと思います。
ドルというのは借金証書であり、借金を返済した時点で証書には意味がなくなります。
または債務不履行が起こっても証書には意味がなくなります。
つまり人や国家機関が負債を返済する時点で、通貨の裏付けが減る→つまり返した分だけドルの存在が消えるということになります。
あるいは債務不履行を起こしてもほぼ同様の結果になります。
もし中央銀行が完全にインフレを終わらせてデフレにしたいのであれば、負債を全て返済させることが必要になります。
そうなると負債が完済されるため、理論的には借金証書である米ドルは姿を消し、最終的にはFRBは不要な存在となります。
FRBの立場は非常に微妙なもので、負債を返してもらうことを期待しつつも、本当に返済されれば自らの首を絞めることになります。
同時に債務の発行をやめれば、ドルの購買力は一気に下落するというジレンマにもあります。
これはある意味、蛇が自分の尻尾を食べるようなものです。
弱まっていく通貨を下支えするためには負債を発行しなければなりませんが、発行すればするほどインフレによる購買力の低下が進むということです。
かといって債務を発行できなくなれば、FRBの存在意義もなくなるということになります。
一言でいえば「インフレとの闘い」に勝つ=中央銀行の自殺を意味します。
これは仮の話になります。
ドルの負債全てが返済されるかあるいは債務のデフォルトが起これば、全世界で深刻なデフレが起こり、モノの価格は100年ほど前の戻ると言われています。
金の価格も大幅に下落し、1オンス=$30のレベルにまで下落すると言われています。
数字上は下落しますが、通貨の購買力全てが金と銀に集約されることになり、実際の購買力は大幅に増えることになります。
ただこれが起こると世界中の経済というかシステムすべてが崩壊してしまうわけで、大恐慌がどうだといったレベルではない別次元の話になります。
過去90年間続いてきたインフレが、短期間の間に逆戻しすることになります。
ありとあらゆるモノの価格が修正され、経済全てを一から再構築することになります。
大恐慌の時、アメリカは金価格を$20から突然$35に引き上げたことがありましたが、その時も世界経済が大混乱が起こりましたが、それを超える大変革となると思われます。
理論的にはそうなのですが、本当にそうなるのかどうかに関しては私は正直判断が付きません。
ただしばらく前にクリフハイがモノの価格が100年前の水準に戻るという予測をしていましたし、一部の経済専門家たちも同様の予測を立てています。
この事態を避けるために世界中ではCBDC導入計画が進行していますが、失敗に終わるとこの予測は当たることになるのかもしれませんね。