非常に懸念すべき進展がありました。
アメリカではインフレが手に付けられない事態になりつつありますが、バイデン政権はある動きに出ました。
「不公平で非合法な価格設定」を行う企業を取り締まるタスクフォースを発足させました。
別の複数の報道では、取り締まりタスクフォースは"攻撃部隊"という言葉が使用されており、取り締まりの強さが連想されます。
価格統制は建前上はインフレで苦しむ国民を助ける政策のように見えますが、実は正反対です。
価格上昇は原材料や人件費のコスト上昇が原因ですが、バイデン政権を法律で強引に押さえつけようとしています。
政府による強引な価格統制は、企業に非常な圧力をかけるものとなります。
原材料と人件費が高騰しているにもかかわらず、品物に反映させることができない企業はコストカットに追い込まれます。
コストカットは最初に人件費に反映されます。
大量解雇が行われ、AIやロボットが導入されることになり、コストカットが出来ない企業は利益が出ないため廃業に追い込まれます。
結果としては人々は職を失うのと同時に、必要な品物の供給が減少することになります。
そして同時に闇市場で品物が高値で取引されることになります。
価格統制の最も深刻な影響は、物不足が深刻化することだと言われています。
1つの例を考えてみましょう。
先日の能登半島地震の直後、飲み水が不足してコンビニでは水が高値で販売されました。
誰もが水を必要としているのに、地震のため水の供給が足りないことが理由で価格が上がります。
価格を釣り上げることを非難する人もいるとは思いますが、資本主義というのは需要と供給で価格が決まりますのでこれは自然なことです。
仮に地震直後の能登半島のコンビニで、ミネラルウォーターが1本1000円で売られたとしましょう。
しかし政府が圧力をかけ価格上限を300円に設定し、違反した事業者には処罰を加えると決めたとします。
するとどのようなことが起こるのか考えてください。
日本の他の地域にも水の販売業者はたくさん存在します。
他の地域の業者は能登半島に水が足りないことを知り、販売を検討します。
1本1000円であれば地震の地域への配送コストを支払ったとしても、メリットがあると考え事業に乗り出します。
しかし水の生産コストと配送コストが400円なのに、政府の決めた価格が300円だとすれば、能登半島に水を配送するインセンティブはなくなります。
結果として水不足なのに供給が長期間行われず、能登半島の人々は苦しむことになります。
同時に闇市場が発生し、水が1000円よりも高い価格で取引されるようになります。
反対に政府が価格統制をしない場合も考えてみたいと思います。
能登半島に水を供給すれば利益が出ると考えた業者が次々と参入し、結果として大量の水が供給される結果となります。
最初は一本1000円で販売されますが、次々と業者が大量の水を供給するにつれて競合が増え、価格は次第に下がっていきます。
このように少し考えると政府による価格統制はどのような結果になるのかは明白だと思います。
バイデン政権は価格統制に乗り出すのと同時に、別の事も行いました。
クレジットカードの延滞手数料に制限を加えました。
歴史的なクレジットカードの負債額を抱えているアメリカ人ですが、延滞率も上昇しています。
カード会社は32ドル程度の延滞手数料を加算していましたが、それを8ドル以下にすることを決定しました。
これも価格統制と同様の影響を及ぼすことになると見られています。
お金を貸したのに回収できないばかりか、延滞手数料による収入も大幅に減少することになれば、カード会社は貸し手を厳しく選択することになります。
つまり延滞すると損をするので、貸し渋りが発生することになります。
お金がないアメリカ人の最後の頼みの綱であるクレジットカードを使えなくするための政策と言えそうです。
英語では"高価格の解決策は高価格である"という諺があります。
価格が高ければ、事業に参入する人が自然と増えて、需要と供給のバランスが取れるようになるという意味です。
我々は政府による価格統制の試みは、インフレよりも格段に悪いということを覚えておくべきです。
ちなみに日本でも同様の動きがあることをお知らせしたいと思います。