BRICSの金融戦争は静かに進行しています。
上海の貴金属取引所とロンドン取引所に価格に乖離が生じていることは知られるようになっています。
そしてCOP28も終わり、気候変動対策として大量の銀が中国で消費されることが決まったばかりです。
12/12にインドで貴金属現物の取引所がオープンしました。インド国際ブリオン取引所(IIBX)という名称です。
この取引所にはこれまでにはない特徴があります。
まずは銀現物の取引が行われること、そして大規模金融機関の取引が規制されているということです。
個人でも小規模事業主でも自由に取引が行えるようで、取引所での取引開始から30分間で3000キロ相当の銀が取引されたとのことです。
ロイターは透明性を確保することを目指す取引所だと報じています。
先日も記事で取り上げましたが、インドは銀を大量に輸入していますが、IIBX経由での取引のようです。
これまでは取引所と言えばロンドンのコメックスしかなく、JPMのような金融機関が現物なしのペーパーデリバティブで価格を決定するのが長年の通例でした。
そのためインドでの現物の取引所が開設されたことは、かなりの衝撃となります。
この動きを受けてか、ロンドンでも新たな動きが出でいます。
ロンドン貴金属取引所(LME)は、上海市場の価格に基づく新たな契約を計画していることが報じられています。
この動きの理由は、中国政府が取引所を通じてコモデティの分野で世界中に影響力を強めようとしている事態に対応するため、としています。
上海やインドで銀価格が上昇するのに合わせていかないと、ロンドンから現物が流出してしまうという危機感の表れなのでしょう。
300倍のレバレッジをかけているとされているJPMにとっては大ピンチです。
記事では触れられていませんが、焦点はLMEの新たな契約の決済通貨は何なのかという点です。
もし決済がドルであれば、貴金属がBRICS諸国に流出するのを抑える戦いが続くことになりますし、仮に人民元であれば完全降伏を意味することになります。
これは同じタイミングでコメックスを運営するCMEグループは、12/14付で貴金属取引にかかる手数料を大幅に引き上げました。
金属価格の上昇をどうしても抑えたいのでしょう。
原油価格を大暴騰させる反面、一度貴金属価格を大暴落させて買い占めるような気もしてきました。
ここ数日の紅海での度重なる攻撃とサプライチェーンの閉鎖の動きは、金価格下落と無関係ではないように思えます。
原油価格が暴騰すれば、機関投資家は金を売って原油に資金を移動しようとするからです。
WTIが$200に到達するのに、金価格が$1300になるような瞬間が来るかもしれません。
英語では黄金の法則と呼ばれるものがあり、それは「金を持つ者がルールを作ることになる」というものです。
貴金属を巡る戦いは新たな段階に入りましたが、今は金よりも銀が圧倒的に不足しているので、銀を持つ者がルールを作る時代になるのかもしれません。