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"くじら"の死

数日前から、海外で注目を集めているのは農林中金です。

FRBのレポファシリティに12/1から加えられたことが金曜日に発表され、初めて農林中金のことを知った人も多かったようです。

5000億ドル分の枠を受け取りましたが、事実上FRBによるベイルアウトです。

この動きに関しては米国議会の関与はなく、FRBによる独断であると考えられています。

 

農林中金は海外では無名の存在ですが、シティに次ぐ規模の大規模金融機関です。

農林中金が注目を集めている理由は報道が金曜日に行われたことで、大抵悪いニュースというのは金曜日に行われるものです。

そして内容がレポに関するもので、金融危機に急いで対応するための資金供給だからです。

なぜFRBが日本の金融機関を救済するのか、という声が上がっていますが、調べたところ農林中金以外ではみずほ銀行と三井住友が既にリストに加えられています。

 

農林中金は農林水産業等の組合が保有する金融機関で、非上場です。

農林水産業向けの融資ばかりを扱っていると思いきや、それは17.5%にすぎすポートフォリオの77%は海外に向けられています。

非上場なので非公開のデータが多いので推測することしかできませんが、デリバティブにはほとんど手を出していないとしています。(怪しいですね。)

その反面、CLO(ローン担保証券)を大量に保有しています。

今年に入り毎月のように含み損が拡大していることが報じられていますが、バランスシートは健全であるとされています。

とは言え突然、リバースレポファシリティに加えられたということは、とりもなおさず破綻状態であることを示しています。

今年の三月に農林中金は米国債で巨額の損失を出し、12兆円(8500億ドル)分を売却したことを明らかにしています。

そして6-9月にかけて損失が倍増したことも報じられています。

 

ここでの疑問はなぜ日銀が資金供給をしなかったのか、というものです。

まず農林中金は日本国債を全く保有していません。そして仮に日銀が円を売ってドルを農林中金に供給すれば日本円は一気に下落することになります。

やりたくてもできなかったということなのでしょう。

唯一残された方法は、農林中金のアメリカ支店を通じて米ドルを供給するというものだったようです。

農林中金が米国債で損失を出しているのは判明していますが、違う問題もあるようです。

 

9月の時点で農林中金は6500億円の預金残高があるのに対し、6300億円の流動性がある当座資産があるとしています。

しかしそのうち73%は海外向けの投資となっています。

つまり農林中金は日本円を調達し海外で運用するキャリートレードの本拠地となっていたということです。

相次ぐ利上げによる米国債の損失に加え、ここ最近の急激な円高で債務が急激に膨らんでいることは容易に想像できます。

日銀の植田総裁が、マイナス金利解除を匂わせた直後の翌日に取り消したのはこれが理由かもしれません。

日銀が利上げをするその瞬間に農林中金は破綻することになるからです。

ただ利上げをしなくてもすでに死に体だと思います。

 

今年の春にシリコンバレー銀行が破綻した時に、郵貯や農林中金といった日本の金融機関がキャリートレードで米国債を買っている額はシリコンバレー銀行などは比較にならない規模であることを指摘する専門家もいました。

そう考えると、みずほ銀行と三菱UFJがレポファシリティ―に入っている理由も同じだと考えるべきでしょう。

 

今日から日銀会合が行われますが、日銀が金利を上げるという予測もあれば上げないという予測もあります。

先週日銀総裁自ら年末からチャレンジンぐになるという意味不明な発言をしましたが、農林中金のことと重ね合わせると真意が読み取れる気がします。

日銀会合に注目ですが、最初のドミノを倒すのは日銀になる可能性は十分あります。

 

ところで農林中金はCLO市場のクジラであると言われています。

農林中金によると、CLOのポートフォリオはすべてAAAだとしていますが、恐らく中身はただの不良債権ばかりだと思われます。

クジラは死ぬと、体内に溜まったガスが爆発するようですが、農林中金も大爆発を起こしてしまうのでしょうか?

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