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商業不動産+デリバティブ=???

今回の経済危機の大元となりそうな商業不動産の話です。

 

今破綻の危機にあるNYCBの話から日本のあおぞら銀行の巨額損失の件、そしてドイツでも大暴落している件が報じられています。

ヨーロッパの金融機関は特にヨーロッパだけでなく、アメリカの商業不動産の損失も受けています。

金融危機の元凶の一つは商業不動産です。

 

今となってはリーマンショック以上の問題になっている商業不動産ですが、理由はいくつもあります。

パンデミックによる在宅勤務によりオフィスのニーズの激減したことがあります。

そして金利の急激な上昇により不動産価格が急落したこと、そして維持費の高騰もあります。

ドイツでは強引な気候変動対応による数々の規制により経費が増大していることが理由として指摘されており、特に古いビルのオーナーたちは高額の修繕費の捻出を強いられて苦しんでいます。

同時に不動産の資産価値の暴落が起こる中、融資の返済期限が迫っている状況でリファイナンスが非常に難しくなっています。

ほとんどの商業不動産のオーナーたちにとって逃げ道はありません。

というのは不動産融資はそもそも返済するつもりがなく、借り換えを繰り返すつもりで永続的に負債を増大していくことが前提となっています。

ですから借り換えができなくなることなど、そもそも想定していないのです。

 

問題はオフィスだけではありません。

アメリカでは大規模小売店舗の相次ぐ閉鎖や倒産が続いていて、メーシーズ、シアーズ、JCペニーやKマートといった大手小売店は姿を消しています。

ここ数年間の間に始まった新たな建設プロジェクトも影響を受けていて、3%程度の変動金利で借り入れをしていたものが今は8%の支払いを強いられています。

今はオフィスばかりに注目が集まっていますが、問題はもっと根深いものです。

 

不動産の価値というものはNOIによって決まります。

NOIとは不動産の価格、賃料と経費を計算した純利益の事ですが、この数字に基づき価格や融資額が決まります。

利益率が下落しているため、商業不動産が50%にまで値下がりしていると言われています。

例えば、3年前に100億で購入したオフィスビルの価値が現在は60億にまで下落しているとしましょう。

仮にオーナーと金融機関は損失を受け入れて、損切をして60億で売りに出したとします。

購入希望者はもっと安くで買いたいという思いと、これからも価格は下落すると考えて買い付け額は提示額を大幅に下回る40億だったとします。

売主と金融機関は苦渋の選択を迫られます。

すでに40億を失った上にさらに20億の損失を受け入れるのか、それとも問題の先延ばしするのかという選択です。

そして多くの場合問題の先延ばしを選択します。どうせ死ぬのであれば、少しでも先に延ばそうという訳です。

 

結末としてはリファイナンスが出来ずにデフォルト→物件差し押さえ、そして金融機関は大損害→破綻ということになります。

今、NYCBで起こっているのはまさにこのことですが、ヘッジファンドは次々と戦略的デフォルトを起こしています。

問題を金融機関に押し付けているわけです。

これだけでもひどい話ですが、話には続きがあります。

今の話は不動産本体の話でデリバティブは含まれていません。

商業不動産は高額な資産ですが、商業不動産に絡むデリバティブの額は天文学的な数字になります。

 

報道を見ると問題の真相を垣間見ることができます。

昨年末の報道では、今年中にアメリカでリファイナンスが必要な額は、FTの資産では1170億ドルに上ると言われています。

この試算はかなり控えめなものかもしれません。

というのはブルームバーグによると、2025年末までにアメリカでは1.5兆ドルのリファイナンスが必要になると算出しています。

数日前の報道では、リファイナンスの額が急増中で9290億ドルに上るとする記事も出でいます。

実際にはさらに多いはずです。

問題は商業不動産は高額であるだけでなく、それぞれに天文学的な額のデリバティブが存在するということです。

下の図はある想定ですが、1000億ドルの資産に対しては1千兆ドルのデリバティブが存在すると言われています。

100倍程度のレバレッジがかかっているようです。

商業不動産は安全資産と見なされているのと、規制がないためハイレバレッジがかかっています。

 

下のデータに基づき100倍のレバレッジがかかっているとすると仮定し、また上の数字が正しいと仮定するとしましょう。

今年の年末までに9290億ドルのリファイナンスが必要なので、ざっと計算すると影響を受けるデリバティブは93兆ドルになります。

2025年末までに1.5兆ドルの融資がデフォルトすると仮定すると、影響を受けるデリバティブの額は150兆ドルとなります。

アメリカ政府の債務が34兆ドルなので、比較するとその大きさが分かります。

デリバティブはCDOなどの形で、年金基金等が大量に買い込んでいますし、別途CDSも存在していますので影響は計り知れません。

 

現在分かっている情報では、NYCBは少なくとも840億ドルの商業不動産不良債権があります。

あおぞら銀行は5600億ドルの不良債権があります。まだ表面化していない他の金融機関もほぼ同様でしょう。

下の図は2022年の時点でのデータですが、主な金融機関の商業不動産へのエキスポ―ジャーです。

 

一般の人はアメリカの商業不動産に投資していないので、無関係だと思い込んでいます。

しかし債券化された不動産をパッケージして格付けされたCDOを年金基金が大量の買いこんでいますし、ファンドも同様なので海外に住む一般人にとっても関係が深い話です。

NYCBの破綻が噂されていますが、これは単なる小さな地銀の破綻以上の意味があることを知っておきたいものです。

商業不動産市場に全てがかかっていることを認識すべきです。

NYCBはまだ破綻していませんが、今週末は要注意です。

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