アメリカ政府が過去に金を没収したことは知られていますが、銀の没収をしたことはあまり知られていません。
経済が混乱して政府の債務状況が非常に悪化すると、政府は通貨や株式、証券といったものの没収は行いません。
このタイプの資産は紙切れと化してしまうからです。
経済危機のリスクが全くない資産というのは2つしかありません。それは金と銀です。
優先順位としてはまずは金、その次に銀となります。
現時点では銀の没収の可能性はそれほど高くはありませんが、状況が非常に悪化する時にはすべての選択肢が浮上するということを知っておくべきです。
国民から没収した上で通貨を金本位制を戻し、信頼を回復しようとするものなのです。
もちろん同じことが起こるとは限りませんが、歴史を知るというのは役に立ちます。
アメリカでは、大恐慌の最中の1934年にルーズベルト大統領は大統領令6814を発令し、アメリカ国内で銀の没収を行いました。
これは金の没収の翌年に発出された大統領令で、最初に金の没収を行いその後に銀に目を付けました。
没収に応じることは"愛国的だ"というプロパガンダも流布しました。
大統領令6814は非常の詳細かつ包括的なもので、ほぼすべての銀の没収を試みるものでした。
以下は没収の対象となった代表的なものです。
国内製だけでなく海外製のコイン全て。
アメリカ政府の管轄内の地域で採掘された一定の純度以上の銀全て。
外国政府、外国中央銀行、BISがアメリカ国内で保有する銀。
米国財務省発行許可に基づき、保管されている銀など。(貴金属販売業者)
Executive Order 6814—Requiring the Delivery of All Silver to the United States for Coinage
仮にこれと同様の法律が施行される場合、打てる対策というのはあまりありません。
ただこの大統領令はアメリカ合衆国の管轄内でのみ有効であったことは、注目に値します。
とは言え、アメリカと関係が深い国には大きな影響を与えると思われます。
例えば、過去にアメリカ政府が香港政府高官に対して経済制裁を発動した時には、圧力に負けて香港内でも制裁が課されたようです。
アメリカ政府が金没収を決めた時、イギリス、オーストラリアといった国も追随しましたが銀は対象外であったようです。
保管庫の契約書には不可抗力の条項があり、外国政府からの没収や訴訟を回避する内容になっている場合があります。
多くの人たちは貴金属の積み立てプログラムを利用していますが、契約書の内容に要確認です。
とはいえ政府は没収を行う前に年金支払額と社会保障を削減することや増税に集中するのと、今はCBDCの競合である仮想通貨の抑え込みを最初に行うはずです。
以下は過去の歴史から学べる点です。
- 貴金属の没収は西側諸国で行われた。
- 経済危機がその発端となった。
- 長期間に及んだ。
- あらゆる種類の貴金属の保有が禁じられた
- 貴金属の装飾品は没収の対象とはならなかった。
没収リスクの対策として考えられるのは、以下の方法です。
まずは金融機関等の保管庫に入れたままにしておかないということです。
次は国家の管轄外の地域に資産を移動させるということです。最近ではBRICS加盟国内に移動を検討する人が増えているようです。
とは言え違う国に資産を移動するということは、違うリスクを生じさせることにもなりかねません。
近年ではスイスのプライベートバンクが、アメリカ政府の圧力に負けて情報開示をした例がありましたし、移動先の国の法律下に入るというリスクがあります。
全てを装飾品に変えてしまうという方法もあります。
女優のエリザベステイラーには良い解決策があり、150億ドル以上の貴金属装飾品を保有していることで有名でした。
ありとあらゆる装飾品を身に着けて海外旅行をしましたが、申告の必要すらありませんでした。これは検討すべき方法の一つです。