ローマ帝国の崩壊について調べれば分かりますが、お金の質の低下と国家の混乱は密接に関係しています。
コインに含まれている銀の量が減るにしたがって、帝国は混乱の度を増していき最後には崩壊することになりました。
国家に対する信頼がなくなると、通貨に対する信頼もなくなります。
世界中で起こっている政治の混乱は、突き詰めればお金の質が極端に下落していることの症状ともいうべきものです。
円を含めほとんどの通貨はドルとペッグされていますので、ドルが死ねば他の通貨も死にます。
現代で言えば、アメリカがそうなのですが、1971年にニクソン大統領が「一時的に」金との兌換を停止してからというもの、50年以上も続いています。
「一時的」ということなので、理論的にはドルはまだ金本位制と言えるはずです。
基軸通貨の支えがなくなったので、代わりに生まれたのはブレトンウッズ体制でした。
キッシンジャーが最大の石油産出国のサウジアラビアに原油取引をドルで行うように持ち掛けるとともに、原油価格の引き上げを行うことにより人為的にドルの需要を作り出しました。
その後、ものすごいスピードで金融緩和が進んだことは誰もが知っています。
そして今週、このブレトンウッズ体制が公式に終了しました。
皆様もご存じの通りサウジアラビアはBRICSに加盟することになりましたし、同時にBRICSは米ドル放棄を明言しているからです。
米ドル体制に嫌気がさしているという要素と泥船から早く逃げ出したいという要素の両方があるのでしょう。
そしてアメリカには対抗する力はありません。
ブレトンウッズ体制が公式に終了したということは、文字通り世界経済の支えがなくなったことを意味しています。
主流メディアはこの件をあまり取り上げていませんが、ドルはもう最後の延命装置を外された状態にあります。
ドルに対するニーズがなくなることにFRBは非常な危機感を抱いているわけですが、昨晩パウエル議長は興味深い発言をしていました。
「インフレ率はまだ高すぎるので、更なる利上げが必要だ」とする発言をし、利上げを長期間継続することを示唆しました。
つまりただ下がりのドルの需要をテコ入れするために、利上げしなければならないと考えているわけです。
「利払いをしてあげるから、米国債を買ってください」と言いたいわけです。
すでにご存じの通り利上げをするということは、国債の価格が下がること、そしてひいてはすでに破綻寸前の金融機関をさらに追い込むことを意味しています。
さらには巨額の利払いを強いられるため、アメリカ政府のデフォルトとハイパーインフレが目前に迫っていることをも意味しています。
BRICS加盟国がドルを捨てると同時に、FRBは極端に利上げに追い込まれ、同時にそれは金融システムを破壊していくものになります。
すでに試合に大きく負けているためアメリカ側は、ある時突然システムのスイッチを切り、強引にCBDC導入を試みると思われます。
今週世界が大きく変わったことを多くの人はまだ知りませんが、もう少しすれば気付くようになります。
サウジアラビアがBRICSに加盟したことは、歴史の教科書に残る出来事になります。
我々にとっては大混乱を意味しますが、これは同時に世界を支配してきたエリートたちが力を失ったことの象徴でもあります。
すでにこの件については何度も取り上げましたが、今この時期に何をするのかで大混乱の時期の切り抜けられるのか、そしてその後の回復期における生活に多大な影響が及ぶことになります。
いまだに世間一般ではDSが巨大な権力を振るい、世界制覇を順調に進めているので最悪を予期すべきだとする人たちも多いようですが、もうその可能性はかなり低くなっていると私は思っています。
もちろん準備は必要ですし悪いことは引き続き起こるとは思いますが、不必要に恐怖感に囚われると心理戦の犠牲になると思います。