昨日の話の続きです。
イギリスから貴金属が大量流出し、アメリカのコメックスに向かっているという話です。
LBMAは金は大量にあるとしていますが、"運び出すのに8週間"かかるそうです。
当初はトランプ政権の関税が原因と言われていましたが、どうやらそれ以上のことが関係しているようです。
関税とは関係なく、もっと大きな金融の流れの中でアメリカ政府は意図的に自国内に貴金属を誘導しているという見方が広まっています。
この方はこのような意見を引用しています。
「これまでに自由に購入できた金の大半は、今ニューヨークの地下倉庫に保管されている。
アメリカの金価格は、現物不足が起こっているロンドンの価格よりも高いのは不思議ではない。
これはトランプの関税とは全く無関係である」
「関税とは、金を自国に帰還させるためのものであり、関税はただの理由付けか目くらましである」
トランプ政権は金と銀を関税の対象外にするとの見方がある一方で、そうではないとする見方を述べる人もいます。
推測の根拠は様々ですが、トランプ政権は関税の対象は完成品のみで原材料は対象外という方針を明らかにしていること。
そして金と銀は精製品であるため、原材料ではなく完成品という概念が適用されるとする一方で、
ただ通常お金には課税をしないというのが通例のため、金に対する課税は行われないと考える人もいます。
銀にはお金という側面と工業製品という側面があります。
もしトランプ政権が銀も関税対象外にするとなると、アメリカ政府は銀は貨幣金属であることを暗に認めることにもなるという意見を述べる人もいます。
専門家の中にはアメリカ国内への流入は、関税ではなく近年の各国の中央銀行の金の大量購入という背景から読み解くべきだとする人が出始めています。
中国は金を大量に買いまくっていることは広く知られていますし、他国も金保有量を増やしたり、アメリカのロシアに対する厳しい経済制裁を受けて、自国に金を帰還させる動きが強まっていました。
これは深刻化する経済制裁を回避するだけでなく、経済危機を切り抜けるための各国の政策でもあります。
同時に、アメリカと米ドルに対する信頼が低下していることをも示すものでもあります。
データによると、アメリカ国内への金流入はトランプ政権発足のかなり前から始まっており、関税発言をきっかけに流入が加速度的に早まっていることを示しています。
金の流入が始まったのは2020年で、この年はパンデミックによる経済危機が深刻化した年でした。
つまりトランプ大統領の関税発言は、これまでにすでに始まっていた意図的に金流入の傾向に拍車をかけただけであるというわけです。
このように考えてみると、自国内の金保管料を増やす誘導をすると言うことは、水面下でもっと大きな事態が進展していると考えるべきなのでしょう。
もしかしたら最後の駆け込みという可能性もありそうです。
トランプ政権はリセットが失敗に終わることを想定した保険として、金現物を積み上げているのでしょうか?
通貨危機に対応すると同時に米ドル覇権を守るために、関税を口実として貴金属の流入を加速させているのでしょうか?
BRICS加盟国はLBMAで貴金属の大量購入を続けており、在庫が減少していることは広く知られていました。
金をアメリカ国内に誘導することで、BRICS加盟国による攻撃をかわそうというのでしょうか?
実に様々な可能性が指摘されています。
ロンドンでは現物引き出し要請に対して、現物が不足しているために中央銀行から借りようとする動きが相次いでいることが報じられています。
上でも触れましたが、すでに現物とペーパーの間では価格の乖離が発生しつつあります。
現物のプレミアムが高騰しているための価格乖離です。
トランプ大統領は脱米ドルを目指すBRICS加盟国には100%の関税を課すとして、脅迫しました。
つい先ほどホワイトハウス報道官はメキシコとカナダに対して25%、中国に対しては10%の関税を課すと発表しました。
例外についての言及はありませんでしたが、原油と天然ガスは対象外となる見通しです。
現時点では、貴金属は対象になる可能性が濃厚です。
カナダもメキシコも対抗措置を講じると思いますが、貴金属が関係してくる可能性はないのでしょうか?
トランプ政権はロンドンからだけでなく、世界中の金銀を一気にアメリカに吸い上げた後に価格改定をすることを目論んでいるのでしょうか?
各国の中央銀行からリースした金現物もコメックスに向かうことになりそうです。
ただコメックスからの現物供給を予定しているインドや中国に対して、トランプ政権がどのような対応をするのかに注目があつまりそうですね。
いずれにしても、世界の注目は一気に金と銀に集中することになりました。
昔の英語の諺に「我々には黄金律がある。金を持つ者がルールを決めることになる」というものがあります。
諺を地で行く展開となりそうですが、買い増しをする予定の方は今週末にした方が良いのかもしれませんね。
ただもし仮に貴金属が関税の対象外となるのならば、価格は下落する可能性があります。