金現物を巡り椅子取りゲームのような状況が起こっています。
トランプ政権発足後、関税引き上げをツールとする激しいやり取りが続いているわけですが、貴金属市場にも当然影響があります。
先日、ベセット財務長官は関税引き上げについてコメントし、全ての製品に対して一律2.5%の関税引き上げを求める案を出しました。
また商務長官のルトニック氏も同様に、製品ごとに異なる税率を課すのではなく、一律の関税引き上げ案に賛成しました。
関税が引き上げられれば、当然税金が加算されるためにアメリカ国内の貴金属価格も上がります。
関税引き上げは2/1になるという観測が浮上しているようで、急いで貴金属現物をアメリカ国内に移動させようという動きが巻き起こっています。
そして貴金属をどこから運ぶかという話ですが、移動元はロンドンです。
ファイナンシャルタイムズがこの件を報じていますが、こちらがタイトルです。
ニューヨークの金在庫を増加を目的としたラッシュにより、ロンドンで金不足が発生するという内容です。
記事の説明によると、英国銀行(BOE)の保管庫からの引き出しが相次いでいるという説明があります。
これまでは現物の引き出しには数日かかっていたところ、現在では4週間から8週間かかるようになっているとのことです。
「大量の金がニューヨークに向けて発送されているため、人々は現物の金を手にすることができておらず、ロンドンでは順番待ちの列ができている」とのことです。
また「ロンドン市場での流動性はなくなってしまった」とも述べています。
英国銀行はコメントを差し控えたとのことです。
これまでにニューヨークに向けて引きだれた金の量は、英国銀行が保有しているとされる金の10%程度に相当します。
それでも引き出しに4-8週間もかかるということは、金のデリバティブのためにリースとして現物を貸し出してしまっていることを示しています。
つまり、英国銀行は事実上のデフォルトと見るべきなのかもしれません。
ロンドンではペーパーコントラクトを現物に変えたいとする人が大量に表れており、取り付け騒ぎが発生していると言っても過言ではありません。
BOEを巡る金に状況については、先ほどブルームバーグやロイターも報じたため、もはや隠すことは無理でしょう。
そして金に注目が集まれば、その次に来るのは銀です。
記事の中では、関税引き上げにより在庫不足からシルバースクイーズが発生する可能性を指摘した専門家のコメントが掲載されています。
そして実際に、今LBMAに現物を引き換える要請(EFP)が急増しています。
先月末のデータによると、LBMAの現物在庫は過去最低を記録しています。
ここで疑問があります。
トランプ政権は、本当に金と銀をも含む形での関税引き上げに踏み切るのでしょうか?
ソロスの右腕でヘッジファンドマネージーのベセント氏は関税引き上げで、ショートポジションをクローズできない金融機関に損失が発生することを知らないということがありうるのでしょうか?
またロンドンの在庫が少ないことを本当に知らないのでしょうか?
質問の答えは、トランプ政権が本当に関税引き上げに踏み切るのかにかかっています。